せんと♨︎ガール

美大出身の「せんとガール」が、昔ながらの銭湯をめぐる。(主に東京) 

せんと♨︎ガール、銭湯の取材に行く。(後編)

「せんと♨︎ガール、銭湯の取材に行く編」の最終回です。

前編はこちら。中編はこちらから、読むことができます。

 

撮影日の当日。

許可を頂いている分、初日に比べて少し気持ちが楽です。銭湯の中の撮影したい場所を頭に思い浮かべ、シミュレーションしながら、T浴場へたどり着きました。

ご主人に電話をして、裏口から入れてもらいます。

これまでの取材で、とある他の銭湯では、ドアを開けたとたんに二匹のワンちゃんに吠えられたこともありました…。

T浴場ではそんなハプニングもなく、最近の銭湯には珍しい番頭さんと、ご主人が、笑顔で出迎えてくれました。

 

「じゃあ、まずは庭を見せようかな」

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ここの銭湯の脱衣所から見える庭は、定期的に庭師さんを呼んで、丁寧にお手入れなさっているのです。

「あれは、ここで一番立派な松でね。」

「この岩の上を渡ると池の向こう側に行けるんだよ」

寡黙なご主人かと思いきや、つきっきりで、よく説明してくださいます。

「う、うわ〜大丈夫かな〜」

わたしはおそるおそる池の上に顔を出している岩の上に立ち、

「ゆ、揺れません!大丈夫です!」と叫ぶと、ご主人は、けらけらと笑ってくれました。

「あ!あそこに!とんぼがいるよ!」

「ど、どこですかっ」

岩の上から、ご主人が指さした方向をパシャパシャと撮る、わたし。

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見えづらいですが、照明の傘のてっぺんに止まっています。

「このカメラ、ズーム機能がないんです〜」

「ははっそりゃ残念だ〜」

ご主人、またけらけらと笑う。

なんだか、とても話しやすいお方。そして説明している間、とても楽しそうで目が輝いていらっしゃいます。先日の、「な、仲良くなれるだろうか」という心配は、やはり無駄であったかもしれない。と思いながら、ご主人との会話を楽しむ、せんと♨︎ガールでありました。

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風呂場の撮影が終わった後は、番頭さんがお湯を沸かすためにかまどへ薪をくべるところを、見せてもらいました。ここは、温度が高い!一瞬で汗だくです。

 

この部屋の隣に、浴槽とは別にお湯を溜めている大きなプールがあり、そこに何本もの太いパイプが通って、かまどに繋がっています。そのパイプを温めることにより、お湯の温度を調節するのです。

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薪にする破材は、近所の解体工事で出たがれきを貰ってきて、ストックしているのだそう。

プールは長い方の辺?が8メートルくらいある大きいもので、職人さんがひとつひとつ切ったという分厚い木の板が並べてあり、それをフタにしているのです。板それぞれ全てに番号が振ってあって、パズルのようにしっかりはまるよう、並べる順番が決めてありました。

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かまどに戻ります。

カメラを構えて汗をたらしながらも、火を見ているとなんだか気持ちが落ち着いて、ぼーっとしばらく見つめていたくなります…。

「普段あんまり火を見ることがないんです」と言って、しばらく突っ立っているわたしを、温かく見守ってくださる、ご主人と番頭さん。とてもやさしいのです。

 

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最後に外へ出て、煙突の説明をしてもらいました。高さは23メートル。掃除の際には、すすが米俵2俵分はとれるのだそうですよ。

ご主人が、煙突の中で自分が回りながら掃除していく様子を、道の真ん中で回って表現して見せてくれました。

なんだか、おちゃめなご主人だなあ…。

銭湯の煙突専門の掃除屋さんがいるそうですが、もう日本に何人かしかいないのだそう〜。「また、減っちゃったから新しく掃除屋を探さなきゃ行けないんだ」と言っていました。

 

「ほいっ」と、ご主人から頂いたいちご牛乳を、銭湯の目の前で、最後に飲ませて頂く。甘くておいしい。

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T浴場のご夫婦と番頭さんたちの温かい人柄に触れて、

明日も頑張れそうな気がした、せんと♨︎ガールなのでした。

 

 

 

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