せんと♨︎ガール

美大出身の「せんとガール」が、昔ながらの銭湯をめぐる。(主に東京) 

せんと♨︎ガール、銭湯の取材に行く。(前編)

今回はちょっと特別編です。

 

 

・・・銭湯の中の撮影は、禁止されていることが多い。
携帯電話やスマートフォンも、盗撮の恐れがあるため、ほとんど、使う行為すら許されていない。
銭湯が、安心して裸になれる場所であるためには、当然かなとおもいます。
中を撮影するには、やはり銭湯のご主人に許可を貰わねばなりません。

 

さて、今回は、私が銭湯の取材をするときの手順、のようなものを書いてみようと思います。ここのところ、
「せんとガールさん。銭湯の中の様子って、一体どうやって撮影するのですか?」
と、聞かれることが度々ありました。
読者のみなさんの素朴な疑問には、積極的に答えて行きたい、と思うたのであります。

 

銭湯の撮影や取材をしている、というと、
行動力ある。度胸もあるね。おみそれしました。
などと、声をかけて頂くことがあります。

ただ、本来、気弱で、か弱く、引っ込み思案な私としては、
いくら銭湯が好きと言えども、なかなか、ぎりぎりの精神状態でやっているのです。
なんせ、初めて行った銭湯で、初めて会う、ご主人。けっこうどきどきするものです。

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向こうから見た私も、見ず知らずの人間です。珍しいお客、なにやら顔の幼めの、年齢不詳の女、何故か半笑いの状態で、リュックを背負って一人で入りにくる。そして緊張しているもので、言葉足らずで、なにか動きがぎくしゃくしている。そしてあたりをキョロキョロ見渡している。
・・・こう、客観的に振り返って書いてみると、なかなか怪しい人物ですな。

私の方はと言えば、

「忙しい時に話しかけて、迷惑に思わないだろうか…」「不審者と、思われないだろうか…」「ココまで来て、断られたらどうしよう…」

などなど、
心の中には色々と、迷いがありながらも、それでいてどうしても撮影させてもらいたいっ。という気持ちもあるので、行動がちょっと、ちょっとおかしなことになります。

撮影をお願いする時なんて、もう、生きるか、死ぬかの瀬戸際のスリルを味わっている!ような気持ちです。(…というのは大げさ過ぎかな。。。)
が、そのスリルが、あとあと振り返ると、あぁ、面白かったなあ…と思えたりもするのです。

 

 

それは、初めて行った銭湯の、入り口ののれんをくぐるところから、始まる…

 

〜T浴場にて〜

 

ガラガラ〜(自動ドアの音)

私(わあ、すごい。立派なフロントだなあ・・)

「いらっしゃい」

ご主人は、挨拶のあと、すぐにテレビの方に視線を移した。

…少しでも会話をして、まずは信用してもらわねば。と、燃える私。

「あ、あのう、ボディーソープを買いたいんですけど…」(控えめに)

「ああ、40円ですよ。これね。」

「……」(ご主人となるべく近くで同じ空気を吸い、(←?)仲良くなるため、時間をかけて選ぶ作戦、の私)

「ボディーソープ、これだよ?」

「…あっ。はいっ。」

…ボディーソープは一つしか無かった。

50円玉をフロントの台に置く。ご主人はすぐに硬貨を取らず、その50円玉硬貨のすぐ隣に、おつりの10円をチャリンと置く。危うく払った50円玉も一緒に財布に戻しそうになる。(あ、あぶなっ…。)

持って行かれないようにお金はどかしておくとか、そういうことにはこだわらない、おおらかなご主人なのだ。

かろうじて(?)釣り銭の10円だけを財布に入れ、向きを変え、再びぎくしゃくと、女湯ののれんをくぐろうとする私。

「あ、ちょっと、お風呂に入るの!?」

「あ、はいっ(やばっ)」

滑るようにフロント前に戻る。

「460円だからさ」

「す、すみません、先払いですね!」

無賃入浴するところであった…信用してもらうどころか、犯罪を犯すところだった。
けれどもそこは、初心者なので多めに見てくれます。

すみません、はじめてなもので、慣れてなくて、と言い訳すると、

のれんの中にも自動ドアがあるから、そこから入ってね、と優しく教えてくれた。

 

スタートから、はらはらしっぱなしの、せんとガールである。 

 

・・・中編へつづく。