せんと♨︎ガール

美大出身の「せんとガール」が、昔ながらの銭湯をめぐる。(主に東京) 

社長1

富士見湯日記 *1 より。

 

2011年 5月17日 曇り

 

「お前、俺のこと好きなんだって?」

二階で出くわすと、社長はいつも言う。おそらくアルバイトの女の子全員に、言って回っているのだろう。いや、お客さんにも声をかけていそうだ。
「みんな噂してるよ」と社長は言った。毎度の台詞である。

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私は、そうなんだ、と適当に受け流しながら食器を洗っていた。エプロンが引っ張られたので振り返ると、後ろから人のエプロンで手を拭こうとしていた。
「なにやってんの社長!」
とりあえず一喝したが、なぜか憎めない。

 

富士見湯でのバイト中、社長は、気づいたら居なかったり、突然キッチンに現れたりと、神出鬼没なモンスターのようなところがある。

不意に出没されたことに驚き、お酒をこぼしたこともある。
そういうとき社長は、実に嬉しそうにわっはっはと笑うのだ。経営者なのに、従業員の失敗を見るのが楽しいらしい。

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交番でもらったのだろうか。首からぶら下げたピンクの携帯には、ピーポ君のストラップが付いている。
あるものは、なんでも使う。そういうイメージがある。

 

 

…つづく。 

 
 

*1:※「富士見湯日記」とは……せんと♨︎ガールの学生時代のアルバイト先、富士見湯ケンコー銭湯」での出来事を日記に綴ったものなのです。(銭湯の名前をクリックすると、地図が出ます。)