世田谷ノスタルジー、藤の湯(後編)
さ、お楽しみの、やぐら下の木風呂。こぢんまりした浴槽なので、誰も入ろうとしていない瞬間を見計らい、さっと移動し、いやみなく(?)独占します。
お湯の温度がぬるめで、りらっくす〜。緊張と、弛緩の、絶妙バランス。これが銭湯の面白いところです。
横を見ると、謎の木の引き戸がぽつりと。もしや、外湯に繋がっているのか?
…特に案内などは書いてなく。
ここで躊躇して露天風呂を取材し損ねては、後悔するぞ。
立ち上がり、謎の引き戸に、そろり、そろりと近づいていきました。
おそるおそる、引き戸に手をかける。
「あなた、何してるの!」
びくっ。
風呂椅子に腰掛けてシャンプーしていたおばさまに呼び止められ、びくりと固まりました。
「あなた、そっちは、ここのお家の裏よ。」
「あ、そうでしたか…教えて頂いて、ありがとうございます」
意味もなく頭の後ろをぽりぽり掻きながら、湯船の方に戻ります。
「あなた、どこに行こうとしたの?」
まだ、怪訝なようす。
「あ、いや、外風呂があるのかと思いまして」
「ないわよ。全然、ない。」
きっと、この銭湯を営むご家族とも親しい、常連さんなのでしょう。私の行動がよほどおかしかったのか(慣れない場所では挙動不審な振る舞いをしがちな私である)、諭すような口調で言われました。
へこへこしながら木風呂に戻り、湯に肩まで浸かりながら、たった今のやりとりを反芻して、ニヤリとしてしまいます。←あやしい
それにしてもこの木風呂のぬるめのお湯は、いつまでも入っていられます。
後から入ってきたおばあちゃんと一緒に、同じ方角を見て並んで浸かっていました。
先ほど開けようとした戸がガラッと開いて、Tシャツにズボンを履いた女性が、何か小さな荷物を持って入ってきました。
(あの方が、ここのお家の方…)
「お湯、いい感じよ〜。今日は寒いからねえ〜。」
「ほんと、今日は寒いですよね〜。いつも、ありがとうございます。」
横のおばあちゃんと、親しそうにやり取り。
こういうちょっとした会話の積み重ねで、お店側とお客さんの間の信頼関係は成り立っているのですね。
初めて来た身分でおうちの戸を開けるなんて、私としたことが、無粋なことをしたもんだ…、いや、でも知らなかったし、しょうがないし…
などと脱衣所で服を着ながら一人問答をしていましたが、
目の前でレトロな体重計に乗ろうとする、おばあちゃんのスロー具合に癒され、まぁよしとしました。
藤の湯レポ、ふくろう編もあります。
藤の湯データ
住所 | 玉川台2-1-16 | ||
---|---|---|---|
TEL | 03-3700-3920 | FAX | 03-3709-1678 |
営業時間 | 15:30~23:00 | ||
定休日 | 金曜日 |
マップはこちら。